突板(つきいた)張替・剥がれ補修
天然木の美しさを極める、職人の技術です。
「突板(つきいた)家具」と聞いて、安価なプリント合板を想像していませんか?
本来の突板とは、希少な銘木(ウォールナット、オーク、欅など)を紙のように薄くスライスし、土台となる木材に貼り合わせた伝統的な技法です。
これにより、無垢材では反りや割れが出やすい環境でも、美しい木目を安定して楽しむことができます。
しかし、経年による「剥がれ」「浮き」「割れ」は避けられません。
これらを美しく直すには、単に糊で貼るだけでなく、既存の木目との調和(色合わせ)、下地の調整、そして高度な圧着技術が必要です。
イー家具屋は、日本一の家具産地・大川の知識と技術で、剥がれた突板を芸術的に修復します。
【主な対応内容】
- 突板の張替:劣化が激しい面を、新しい天然木突板で全面的に張り替えます。
- 浮き・剥がれ補修:部分的に浮いた箇所へ接着剤を充填し、専用工具で圧着・修復します。
- 欠け・割れの補修:欠損した部分に同種の木材を埋め込み、馴染ませる高度な技術です。
- ウレタン塗装仕上げ:張替後、耐久性の高いウレタン塗装で美しさを保護します。
Case: プロオーディオ業者様ご依頼 - 難易度S級・スピーカー突板エイジング張替
Case: 引出し前面の「ほげ(穴)」修復 - 埋め木と突板の複合技術
欠損した部分に、新たな命を埋め込む
「ほげ」とは? 佐賀・筑後弁で「穴」のこと
「引出しがほげた(穴が開いた)」というご相談。表面の突板だけでなく、下地ごとえぐれてしまっている状態でした。
パテで埋める簡易的な補修もありますが、それでは木目が消えてしまい、不自然な仕上がりになります。
そこで、今回は「埋め木(うめき)」と「突板張替」の複合技で修理を行いました。
木目を繋ぐ、職人のパズル
まず穴の部分に同素材の木材を隙間なく埋め込み、平滑にします。
その上から、周囲の木目と流れが合うように選んだ新しい突板を貼り合わせました。
最後に全体のトーンを合わせる塗装を施すことで、傷跡は完全に消え去り、家具としての機能と美しさが復活しました。
Case: マンション水漏れ被害 - 桐箪笥(きりたんす)内部の突板全張替
「拭けば大丈夫」ではない。桐の吸水性とカビ対策
塗装された家具とは違う、緊急事態
マンションの上階での洗濯機トラブルにより、下階のお部屋まで水が漏れてしまったという事例です。
楢(ナラ)などの堅木にウレタン塗装が施された家具であれば、表面の水を拭き取れば済むこともあります。
しかし、「桐(キリ)」は別です。桐は調湿作用に優れている(湿気を吸う)反面、今回のように大量の水を被ると、スポンジのように内部まで水を吸い込んでしまいます。
徹底的な乾燥、そして「除菌」という工程
表面だけ乾いたように見えても、内部に水分が残っていれば必ずカビが発生し、板が腐敗・剥離します。
私たちはまず、時間をかけて内部まで徹底的に乾燥させました。その後、水を吸った既存の桐を全て剥がし、念のために「除菌処理」を実施。
衛生環境をリセットした上で、新しい桐の突板を貼り直しました。
家具の修理だけでなく、お客様の「安心」を取り戻すための処置です。
Case: 自動車内装パーツ(黒檀)突板張替 - 耐熱・耐震・磨き塗装
過酷な車内環境に耐える「接着」と「塗装」の科学
通常の家具修理とは異なる、特殊な条件
自動車の内装ウッドパネル(黒檀)の修復ご依頼です。
車のパーツは複雑なカーブや凹凸が多く、機械で一気にプレスして張ることができません。そのため、熟練の職人が少しずつ突板を切り分けながら、全て「手張り」で仕上げていく必要があります。
「耐熱・耐震接着」と「磨き塗装」
さらに重要なのが環境への対策です。車内は夏場の高温、湿度の変化、そして走行中の振動に晒されます。
通常の木工用ボンドでは熱で溶けて剥がれてしまうため、今回は「耐熱性・耐振動性」に優れた特殊な接着剤を選定しました。
仕上げは、塗ったまま終わる通常のウレタン塗装とは一線を画す「磨き塗装」を採用。
塗装後に何度も研磨して表面を平滑に磨き上げることで、黒檀の深みのある木目と、鏡のような極上の光沢を引き出しています。
Case: 欅(ケヤキ)小物入れ - 突板浮き補修・張替(塗装前)
塗装で隠す前の「すっぴん」を見てほしい
浮き・剥がれの根本治療
長年愛用された欅(ケヤキ)の小物入れ。突板が浮いてしまい、手で触れるとパリパリと音がする状態でした。
古い突板を全て剥がし、下地を調整した上で、新しい欅の突板を張り替えました。
誤魔化しのきかない「白木」の美しさ
あえて「塗装前」の状態をご覧に入れます。
塗装をすれば多少の粗は隠せますが、この白木の状態こそが職人の腕を証明します。
継ぎ目(目地)の処理、木目の合わせ方、そして接着の精度。
これから塗装を施すことで、この欅の木目がさらに深く、美しく浮かび上がります。
Case: JBLスピーカー底面修理 - 突板張替・下地形成
なぜ高級スピーカーは「突板」なのか
「無垢材」を使わない理由
多くの高級スピーカー(JBL等)のエンクロージャーは、実は無垢材ではなく、パーティクルボード(木くずの圧縮材)やMDFで作られています。
これはコストダウンではなく、音響特性(共振の制御)や、経年による反り・割れを防ぐためです。
その機能的な芯材に、美しい天然木の突板を貼ることで、音質と高級感を両立させているのです。
底面の崩壊からの再生
今回は底面の突板が剥がれ、湿気等で下地のパーティクルボードまで崩れてしまっていました。
まず脆くなった下地を樹脂で固めて平滑に形成し直し、その上からオリジナルの木目に近いウォールナットの突板を圧着。
最後にウレタン塗装で保護膜を作ることで、新品同様の美しさと強度を取り戻しました。
Case: 欅(ケヤキ)民芸箪笥 側面陥没修復 - 衝撃による「ほげ」の再生
銘木の力強さを、もう一度。
人気の民芸家具を襲った悲劇
堅牢さと美しい木目で人気の「欅(ケヤキ)民芸箪笥」。
しかし、どんなに丈夫な家具でも、引越しや模様替え時の強い衝撃には耐えられません。
側面が大きく割れ、内部へ陥没してしまった痛々しい姿。「もう直らないのでは…」と諦めかけるほどのダメージでした。
傷跡を「無かったこと」にする技術
陥没した下地を強固に埋め戻し、平滑な面を作り直すことからスタート。
そして最も重要なのが「木目合わせ」です。欅特有の力強い木目に似た突板を厳選し、違和感なく張り合わせました。
仕上げの塗装を経て、傷跡は完全に消失。
「良い家具は、直せば一生使える」。
この修復事例が、それを証明しています。
突板技術は、貴重な銘木資源を有効活用するための先人の知恵です。
傷んだからと捨てるのではなく、表面を張り替えて再生させることは、
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」
に直結する、環境に優しい選択です。
新品の突板を、あえて「日焼け」させる技術
0.1ミリの段差も許さない「部分張替」
オーディオ専門業者様からのご依頼です。スピーカー側面の大きな破損に伴い、突板の「部分張替」が必要となりました。
この修理の難しさは、全面張替ではなく、「既存の面と新しい面を繋ぐ」点にあります。
単純に新しい突板を貼ると、そこだけ色が明るく浮いてしまい、継ぎ目が目立ってしまいます。
経年変化(エイジング)を再現する調色
私たちは、数ある在庫の中から木目が近似した突板を選定。さらに、長年使い込まれたスピーカーの日焼け具合に合わせて、着色と塗装を幾重にも重ねました。
この「エイジング合わせ」により、どこを修理したのか分からないレベルまで自然に馴染ませています。
プロの厳しい目にも叶う、大川の職人技の結晶です。